コンピューター関連の表現は時に抽象レベルともいえるほど専門的だ。ただし、これから述べるように、VPNに関してはそうとも言えない。
インターネットは、相互接続したコンピューターサーバーの膨大なネットワークだ。VPNとはバーチャル・プライベート・ネットワーク(vertical private network)の略で、ホームネットワークとは違いインターネット上に見つかるようなものだ。それでバーチャルという言葉が入っている。自分だけがアクセスできるのでプライベートと言える。
IPアドレスは誰にでも分かる
インターネットに接続しているデバイス(携帯電話、コンピューター、タブレットなど)ならどれでもIPアドレスを持っている。IPアドレスはインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)から割り当てられる、デバイスのID番号の一種だ。
様々な状況でマイナンバーを使うのと同じように、デバイスのIPアドレスはネット上で何かする場合にほぼ毎回記録される。例えば、ウェブサイトを閲覧する度に記録に残る。
つまり、プロバイダーは私たちがどのウェブサイトにいつアクセスしたか見ることができる。
インターネットは忘れない
インターネット上の記録は決して消えないことを覚えておくと良いだろう。一度世界のどこかにあるサーバーに保存されると、完全に抹消するのも、抹消されたか確認するのもほぼ不可能だ。
IPアドレスとそれに伴う記録にも同じことが言える。プロバイダー、政府当局、ほかの誰であっても、インターネットに残る足跡すべてを辿ることが可能なのだ。
情報の保存期間に関する規制はあるが、実際問題としてそれが行われているか調査するのは不可能である。
画面の向こうは安全ではない
基本的にすべてのインターネット・トラフィックは暗号化されていない。つまり、ハッカーであれほかの誰であれ、サーバーとデバイス間でやりとりされる情報を奪うことは可能である。
私たちの情報と悪意のある人物との間にファイヤーウォールは存在しないかもしれないのだ。
安全と匿名性を守るVPN
VPN接続はデバイスとインターネット間のセキュリティーレベルを高める。デバイスのIPアドレスの代わりに、接続しているVPNサーバーのIPアドレスが登録される。そうすれば記録をたどれないため、他人にインターネット上の活動を把握されることはない。
加えて、VPNサーバーとインターネットサーバー間で暗号化されるため情報交換は常に安全になる。従って、例えハッカーでも情報を盗むことはできない。
最後に、VPNには地理的な制限がない。例えば、米国のサーバーに接続すれば残りの部分のインターネットも物理的に米国にいるように見えるのだ。
さて、VPNがプライバシーを保護するためにどのような働きをするか、少しお分かりいただけたと思う。今からは、ネット上の活動を知ろうとアクセスしているのが実際には誰なのかさらに詳しく見ていこう。国ごとに状況は違う。とりあえず、これだけは言っておこう。この件に関し、ヨーロッパではプライバシーは保護されない。
いくつの目が監視しているか?
通常は、3つのグループに分けられる。5アイズ、9アイズ、14アイズとは、それぞれのグループに何カ国含まれ、ネット上の行動に関する情報を共有しているのかを示している。
5アイズ
米国、英国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアの5カ国による、最も包括的な機密情報交換の協定である。誰が爆弾についての動画を再生し大量の肥料を購入したかという情報だけでなく、日々の正常なインターネット利用についても共有される。
この5カ国の当局は監視のための広範囲な枠組みを持っており、例えばグループ内のほかの国の諜報機関に特定の国民を探るよう求めることもありうる。
9アイズ
機密情報共有のため、上記の5カ国と密接に連携しているデンマーク、フランス、オランダ、ノルウェイが加わり、9アイズとなる。
14アイズ
しかし、監視はこれだけでは終わらない。9カ国に加えさらに5ヵ国が主要な軍事機密を共有する協定を結んだ。スウェーデン、ドイツ、ベルギー、イタリア、スペインである。これで、国境を越えて情報共有する14カ国がそろった。
プライバシー保護のあり方、厳格か自由か
上に挙げた情報により、もしVPNを利用しないならどれほど多くの国に個人情報が共有されるかを垣間見た。しかし同時に、VPNプロバイダーの選択の重要性も明らかになった。本当に匿名性を守りたいなら、利用するプロバイダーは情報を保管したり公開したりしてはならない。
ご存知のように、企業は登録されている国の法律下にある。プライバシーに関する規則は大いに異なる。例えば、米国に拠点を置くVPNプロバイダーを選べば、匿名性を守ることはできない。その企業は個人情報を保存するよう法律上義務付けられており、多くの情報提供をしている可能性があるからだ。
一方、当局も他人もログを傍受したり保存したりできないよう法律で保障される国に拠点を置くVPNプロバイダーを選べば、匿名のまま夜も安心して眠りにつけるだろう。
無制限のコンテンツ
VPNサービスを利用すると、ジオブロックを解除できる。接続しているVPNサーバーがある国にいるように見えるからだ。 従って、米国のサーバーに接続すれば「アメリカ版Netflix」に、英国のサーバーに接続すれば「BBC iPlayer」にアクセスできるようになる。